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〜その2(自動車整備士に送る)〜

2000.6.1


おかたかより

将来自動車整備隊員になりたい人必見!!


《もう一回、ここに来るとしたら・・・》

 これは間違っても「任期が終わってもここに居たい」訳ではなく、もし「お前、出直してこい!」なんて言われたら・・・。さてどうしようか?というシュミレーションである。

 

その一:何を持ってくるか・・・

私は「アナカン」の荷物が100kgを越えたほど工具と整備書の類いは十分持って来たつもりだった。が、それでも足りないものが結構有る。欲を出したらきりがないが、これから任地へ赴く人のためにちょっと書き出して見よう。
と、その前に持って来て役に立ったなぁ、というものを紹介しよう。

@整備書
 
やはり有ると無いとで全然違う。自分が分からないときもそうだが、それよりも締め付けト ルクや順序がきちんと決まっていたり、どこまで減ったら使用限界かを示すのに一目瞭然である。僕ら若造が言うより効き目がある。持って来てもどうせ置いて行くことになると思うので英語のマニュアルを持ってくることを勧める。

Aテスター
 
こちらの人は電気に弱い。やはり目に見えないからかもしれない。ショートさせてパチパチ火花が飛んだら電気が来てる。なんて方法で確かめてるんだもんなぁ。だから最近のセンサーが使われてる車の修理はお手上げである。「抵抗を計る」という概念が無い。だからそれらの事を目に見えるようにしなければならないのだが、それをしてくれるのがテスターである。ただし、なぜ、その数値が出たのかを理解してもらうのも、これまた一苦労である。

"おかたか"より:まったくもって泣けてくる。苦労が判るなぁ。

B懐中電灯
 
「マグライト」のような丈夫なやつがいい。汚れた手で触っても、油が付いても、落としても壊れないようなのでなければいけない。大抵の職場は屋根がついていると思うが、照明まで完備してあるとこは少ないと思う。あっても電球が買えなくて着かないというところもあるだろう。ライトはあってもコンセントまで遠かったり、停電だったりして役に立たなかったりする。やはり暗いところでは手元が狂うので必需品です。

Cドライバー(ねじ回し)
「現地スタッフに工具を叩かれて駄目にされた。」とは良く聞く言葉だが、やはり「自分の物」という意識が薄いので、何度言ってもこればかりは直りそうも無い。私もこの一年半でマイナスドライバーを3本駄目にされた。まぁ私の場合、壊してもいい物を予め持って来ていたので別段イライラすることは無かったが、それでも叩いていいやつとわるいやつがあることを教えておかなければいけない。不用意に貸すとすぐこじったり叩いたりする。あと、長いのや短いのを用意しておくと便利。

Dディープソケット
 
ここから少し専門的な物の紹介になるが、これはなかなか重宝している。もし新しく揃えるなら6ポイントの物がいい。マフラーのナットを緩めるとき錆び付いてしまって12ポイントのメガネレンチではスリップしてしまう場合など。思わぬところで役に立つ。またカウンターパートと一緒に仕事をしているとき、二人で同じ工具を使いたいときに一人が普通のものを、もう一人がディープを使えば片方が終わるまでボケッと待っている必要がなくて仕事が速い。ちなみに工具の絶対量が不足している途上国ではよくあることである。

Eフレアナットレンチ
 
ブレーキパイプのナットを緩めるばかりでなく”ナメ”かけたネジにも結構使える。特にブレーキパイプのナットはおいそれと新しい物に交換できないので、”ナメ”て丸くしてしまう前にこれを使うことを指導していただきたい。

Fバイスプライヤー
 
そして丸くなってしまった場合はどうするのか?というときはこれを使う。回らないネジはマイナスドライバーで叩いて回す。というのが一般的だが、再使用率が限りなくゼロになってしまうのでこれを使うことを勧める。これならばヤスリで六角形にしてやればもう一度使える(その代わりサイズが小さくなるが・・・)

Gポンチ
 
これは穴を開けるときなど、ドリルがずれないように鉄板などにマーク(くぼみ)を付けるものである。その他の用途としてエンジンオーバーホールのときなど、同じ部品が有るときに区別する方法としてポンチでくぼみを付けておくのである。日本ではお馴染みのこの方法もここでは「ほ〜ナルホド」と感心してくれること間違いなしでしょう。私は「オートポンチ」というスプリング内蔵の物(普通はハンマーで叩く)を持って来ており、足回りの左右の区別にも使っています(部品待ちの期間が長いため、いつの間にかゴッチャになっている事が多い。)

 以上が「便利だなぁ〜」と思った道具の数々です。もちろん普通のハンドツールも持参しました。「配属先にそろってる。」とか、「道具がないところから始めるのも協力隊。」という意見もありましょうが、やはり仕事しに来てると考えれば自分の工具を持ってくるのもまた「良し」なんではないでしょうか。では、「ほしいなぁ〜」と思うものをピックアップ。

@整備書
 
結構持って来たにもかかわらずやはり足りない。無い物ねだりと言われればそれまでだが、私の職場は政府の車ばかりでなく、タクシーや乗合バスなど任地を走るおおよその車全てを扱うので解らないこともしばしば・・・。私の場合、前任者と連絡が取れず、仕方なく古い資料を見て扱っているであろう車種を割り出したのだが、五年ものあいだにアフリカも新車が売られるほどに変化していた。だから私の配属先にも2〜3年落ちの日本車がやってくる。そんな車に限って配線図が欲しかったりするから困る。そんなときは一日かけて線をたどっていくことになる。例えば「援助で入った車両の整備とかだったらマニュアルもあって単一車種を扱っていればいいから楽だったかもしれない。」と思うときもある。「せっかくだから整備書を持って行こう」と思ってる人は現地事務所なり前任者なりに連絡を取るのが間違いないでしょう。それと、マニュアル全部でなくても配線図さえあればあとはどうにかなります。

A各種特殊工具
 
個人で持ち込むにはなかなか難しいと思いますが、余裕があれば汎用の物を持って来ても損は無いと思います。私がこっちに来て買った物はランドクルーザーのタペットシムを交換するときにタペットを押し下げておくツール。ドライバーでこじったりそれらしいのを作ってもらいましたがさすがにこれは純正にはかないませんでした。それ以外は無くてもどうにかやってますが、ギアプーラーは今でもたまに欲しいと感じます。

 

その二:何を学んでくるか・・・

 「出直してこい!!」と言われたからには相当の役立たずだったんでしょう。道具とかなら送ってもらうなどフォローのしようもありますが、勉強不足では後悔先に立たずであります。やはり自動車整備士をはじめとする技術系の隊員は想像以上に期待されてるので相当の覚悟がいるようです。では私が「べんきょうしてくればよかったなぁ〜」と思ったことをいくつか・・・。

@ディーゼルに関して
 
私は日本で働いてるときは全くディーゼルエンジンの車をいじったことが無かったので、三日間の補完研修を受けたものの、付け焼き刃はすぐぼろが出た。そして運がいいのか悪いのか、私の配属先は「ディーゼルインジェクションポンプテスター」なる、普通のディーラー 勤めの整備士ならまず見たことさえ無いであろう機材があったのです。もちろん配属先にはこれを扱える整備士がおり、私が手を出すまでもなく全てをやってくれるので通常は問題ないのですが、困るのは通常の場合でないとき、つまり走っていると急に止まってしまうとか、正しく調整しても調子が悪いなど、ディーゼルのスペシャリスト(少なくとも私よりは・・・)がお手上げのときである。一通りの知識はあるのであれこれやるのだが、やはりこういう場合は「実務経験」という生きたデーターには敵わないようで、どうもピンと来ない。さらに補完研修では古いタイプの物を中心に勉強して来たので、現在配属先で扱っている(というより、アフリカで走っている)車にはなおのことである。
 それでも一年半もやっているとどうにかなるもので、その
「インジェクションポンプ」オーバーホールはまかせっきりだが、それの脱着や、「インジェクションノズル」の点検、オーバーホールをこちらに来てから勉強して、今は若い整備士見習いと一緒にやっているところである。

Aいろんな数値
 
こでいう「数値」とは、締め付けトルクやホイールアライメントの基準値である。締め付けトルクの方は主にシリンダーヘッドの値が重要で、私の配属先では思いのほかエンジンのオーバーホールが多い、そしてそのシリンダーヘッドの締め付け不良による再修理を三度経験している。これは三度ともトルクレンチを使うなどせず、正しい締め付けをしなかった為で、最近はちゃんと指導しているのでそのようなことは無いが、逆に締め付けトルクの数値を聞いてくるので困る、トヨタは親切に「7kg/mで締めたあと、90度、そしてさらに90度締めなさい。」などとタペットカバーに書いてあるのだが、ほかのメーカーは不親切である。で方法や数値も違うので「あの車と一緒」とは言えないのである。私もこちらへ来てから三回ほど電話して聞いたことがあるが、メーカーどうしでは違うが、同じメーカーなら大体一緒(ガソリン車とディーゼルではもちろん違う)なので、全てを覚える必要は無いので日本にいるうちに調べておくと便利でしょう。
 同じくホイールアライメントもそうで、コンピューター仕掛けのテスターではなく、トーインゲージで計るのが精一杯だと思うので、FF、FR、乗用車、トラックなど、おおまかな数値さえ知っていれば何とかなると思います。アフリカは道が悪いのでタイロッドの交換やアームを曲げてしまい、その修正などの修理が結構ありました。


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